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現代アートの美術史~その3~

「現代アートの美術史~その2~」の続編です。

アメリカが世界のアートの中心地となった1940年代以降、1980年代にかけて、現代アートでは様々なジャンルが生まれていきます。その中でも下記に列挙したジャンルのアートを3節にわけて説明していきます。

1940年代に始まる:「アメリカ抽象主義」、「アンフォルメル」
1950年代に始まる:「カラーフィールド・ペインティング/ハード・エッジ」、「ネオ・ダダ」
1960年代に始まる:「ミニマルアート」、「ポップアート」、「コンセプチュアルアート」、「ランドアート」、「フェミニズム/ジェンダー」、「アルテ・ポーヴェラ/もの派」、「スーパーリアリスム」
1970年代に始まる:「グラフィティアート(ストリートアート)」
1980年代に始まる:「ネオ・ポップ」、「ネオ・エクスプレッショニズム(ニューペインティング)」

この約50年間に生まれた様々なジャンルのアートが、それぞれ「何を目指したアートなのか」を知ると、その作品の「意味(コンセプト)」を理解するのに非常に役立ちます。

第3回目の今回は、1960年代から80年代にかけて生まれた色々なアートジャンルをご紹介します。

【1960年代以降に始まる様々なアート】

  これまでの投稿で説明したように、現在の「現代アート」においては、今までにない新しい「コンセプト」や、今までにない全く
  新しい技法のない作品は、もはや世界で評価されないのが現状です。したがって、「コンセプチュアル・アート」ひいては
  「ネオ・ダダ」以降、そのジャンルに属さない作品でも、多かれ少なかれ「コンセプト」が込められるようになりました。
  つまり「コンセプト」を込めつつも形や美や素材も意識し視覚的インパクトのある作品が作られ、その「コンセプト」の内容に
  よってジャンル分けされるような状態になります。
  この節では、1960年代に生まれたジャンル「フェミニズム/ジェンダー」「アルテ・ポーヴェラ/もの派」「ランド・アート」
  「スーパーリアリスム」、1970年代に始まる「ストリート・アート」、1980年代に始まる「ネオ・ポップ」「ネオ・エクスプ
  レッショニズム」を紹介します。

■「フェミニズム/ジェンダー」 → 一言で「女性差別、性差の問題がコンセプト!」

  女性アーティストの再評価、性差別の克服、性差の見直し、ゲイ・レズビアンなどをコンセプトとするアート。
  1960年代頃は、男尊女卑、女性への暴力的心理が社会の根底に存在した時代であり、また女性アーティストは評価されなかっ
  たり、ステレオタイプ化された女性の社会的役割への固定観念、女性の自由について、公に発言しにくい時代でした。
  また1970年代以降には、加えて性差、ゲイ・レズビアンなどへの偏見の克服などが、社会問題となりました。
  このような時代の背景をコンセプトに作品を制作することで、これらの問題を世に問いたのです。
  有名なのは、ジュディ・シカゴ、シンディ・シャーマン、オノ・ヨーコなどです。

■「アルテ・ポーヴェラ/もの派」 → 一言で「モノそのまま!」

  石、木、紙、綿、鉄…などの素材をほぼ未加工で使用し、モノ自体、モノと周囲との関係性に意識を向けるアート。
  「アルテ・ポーヴェラ」はイタリア、「もの派」は日本で、ほぼ同時期に別々に生まれたジャンルだが、同指向で
  共通性が多い。
  有名なのは、「アルテ・ポーヴェラ」はヤニス・クネリス、ミケランジェロ・ピストレット、「もの派」は関根伸夫、
  李禹煥などです。
  瀬戸内のベネッセアートサイト直島にはヤニス・クネリスの作品がありますし、李禹煥の美術館もあります。

■「ランド・アート」 → 一言で「地球がキャンバス!」

  岩、土、木、鉄などの「自然の素材」を用いて砂漠や平原などに作品を構築する美術のジャンルで、「アース・
  ワーク」とも呼ばれる。1960年代のエコロジー回帰の意識の高まりや、環境問題に対する反体制主義的意識、従来
  の室内という作品の展示空間に対する批判をコンセプトとする。
  有名なのは、ロバート・スミッソン、ジェームズ・タレル、クリスト&ジャン・クロード、ウォルター・デ・マリア
  などです。

■「スーパーリアリスム」 → 一言で「本当の現実(リアル)とは何か!」

  実物を写した写真をもう一度克明に描写するという手順で、人物や日常的光景などを克明に極度に写実的に描く
  作品群。写真の発達により、カメラに映る「映像」が、肉眼で見る「リアル」を圧倒しつつある現在、人は「現実」を
  目の前にしても、現実そのものを観ていない...現実の「写し」を見て、それをリアルだと認識し、納得している
  時代ともいえます。本当は、カメラの視覚がとらえる「映像」は実物とは別物の、一種の「虚構」なのだが、すでに
  日常はこの「虚構」に包囲され、この種の新しい視覚を一面で「現実」とみなすに至っている。スーパーリアリズムは
  この新しい視覚をコンセプトに、作品化したものです。
  有名なのは、チャック・クローズ、リチャード・エステス、マルコム・モーリーなどです。

■「グラフィティ・アート」 → 一言で「落書きから始まったアート!」

  都市部の公共建築の壁面や塀、鉄道駅の構内や地下鉄車両の内外などに描かれた落書きの総称。当初は器物損壊や
  不法侵入という犯罪行為とされてきたが、1980年代に入り、芸術性の高い作品を描くキース・ヘリングやジャン=
  ミシェル・バスキアの登場により現代アートの一分野として認められるようになった。
  有名なのは、キース・ヘリング、ジャン=ミシェル・バスキア、バンクシーなど。
  バンクシーは、自分のプロフィールを一切隠し、都市空間に反戦、反政府、反資本主義を主題とする落書きをする。
  2005年にはパレスチナの隔離壁に『歓迎されない仲裁』と題した落書きを残している。また、街中の壁に描かれた
  落書きの部分が許可なく第三者に持ち去られ、オークションに10点が出品され約4億3000万円で落札された。
  また、バスキアの作品は、2017年にzozotownの前澤氏が約123億で落札したことでニュースになりました。

■「ネオ・ポップ」→一言で「パクリのアート!」

  別名「アプロプリエーション(盗用)」とも言われ、まさにパクリを確信犯的に行うアート。大量消費社会とマス
  メディアを主題とした「ポップアート」の時代からさらに高度情報化社会が進んだ結果、「ポップアート」が進化
  して、より確信的に大衆イメージを転用(盗用)したアートが生まれました。それが「ネオ・ポップ」です。
  そしてそこには社会やアートへの批判が「コンセプト」として込められています。
  有名なのは、シェリー・レヴィン、ジェフ・クーンズ)、日本人では森村泰昌など。
  このシェリー・レヴィンの作品は、デュシャンの「泉」を金ピカにしただけの作品です(笑)「こんな便器が
  20世紀で最高に影響力のある作品だなんて・・・金より価値があるのか、これが?」とユーモラスに揶揄した
  作品です。
  クーンズの作品は、マイケル・ジャクソンとそのペット・バブルスを等身大のマイセン陶器で作った作品。
  森村泰昌は、様々なポートレートに自身が扮する作品が有名で、この作品ではモナリザに扮している。なりきって
  みることで見える発見や批判を作品にコンセプトとして込めている。

■「ネオ・エクスプレッショニズム」 → 一言で「現状に反発した原点回帰の具象絵画!」

  「ミニマル・アート」や「コンセプチュアル・アート」など難解な表現の「現代アート」が極地に至った時代に、
  その流れに反発し、旧来の神話や物語、歴史などを題材にした原始的な具象絵画に原点回帰しようとするアーティスト
  がでてきます。そして難解なアートに疲れ切った人々から支持されます。
  といえど、やはり近代アートのような単なる具象絵画ではなく、コンセプトが込められた作品が多いのです。
  有名なのは、ゲオルグ・バゼリッツ、サンドロ・キア、エンツォ・クッキなどです。
  バゼリッツは、因習の打破を常に指向した作家で、人物や動物などのモチーフを逆さにした「逆さま絵画」により、
  モチーフから自動的に連想される「意味」や「解釈」を拒絶し、私たちの眼差しのあり方に根本的な問いを
  突きつける作品を制作しています。

このように1960年代以降、様々なジャンルのアートが生まれ、さらに1980年代以降今日に至るまで、より新しく、斬新なアートが作り出されています。最新のアート作品を鑑賞する際にも、それ以前の現代アートの美術史を頭にインプットしておくことで、その理解の助けとなります。なぜならアーティストは、このような美術史を当然理解した上で、より新しく、斬新な作品を生み出そうと活動しているからです。
みなさまが今後現代アートを楽しむための一助となれば幸いです。