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そもそも現代アートとは?楽しみ方は?

「現代アート」と聞いて、「よくわからない」「ヘンテコなもの」「不可解なもの」で「楽しくない」と思った経験はないでしょうか。確かに「現代アート」は、事前の知識なく、いきなり鑑賞してもすぐに理解できるものではありません。「現代アート」は、みなさんもよくご存じな「印象派」や「エコール・ド・パリ」の画家たちに代表される「近代アート」の作品とは、鑑賞ルールが異なります。

Ⅰ. 近代アートとは?
 諸説ありますが、みなさんもよくご存じクロード・モネやオーギュスト・ルノアールなどがその代表的な画家である「印象派」が、「近代アート」の始まりとされています。「印象派」は1870年代にフランスで始まりました。
 「印象派」以前のアートといえば、一般的に教会や王室、貴族や資産家が、自分たちの権威を象徴する肖像画や、宗教や神話の内容を人々に教授するための宗教画を、芸術家に注文して制作させた作品が中心でした。
 したがって画家は、作品の内容を自らが決めることはなく、注文者が要求する課題をどれだけ知的・美的に発展させて注文者を満足させる作品を制作できるかによって、その力量が測られたのです。
 このような時代に、自分が興味のある人物、場所、感情を自由にキャンバスに描写する芸術家の一群が現れます。彼らは、自分たちの思考や世界観を作品にダイレクトに投影し、その制作プロセスの最初から最後まで全部を自分でコントロールしようとしたのです。当時としては革命的な出来事で、このような「自由なアート」の最初が「印象派」なのです。この「印象派」を起源として、それ以降を「近代アート」といいます。
 「近代アート」では、「印象派」を祖として進化しながら、その後、パブロ・ピカソなどの「キュビスム」、アンリ・マチスなどの「フォーヴィスム」、ジョアン・ミロなどの「シュルレアリスム」など様々なジャンルのアートが生まれて発展していくことになります。
 「近代アート」は、簡単に言うと「見た目(視覚的に)綺麗で何が描いてあるかわかりやすい絵画」といえます。そして、絵画に特有の色・形・フラットな平面の構成において、いかに上手く描けているか、いかに美しいか、いかにその場面や人物の状況を上手く表現できているか、という見た目の「視覚的な形態」の良し悪しによって、画家の力量が測られました。

Ⅱ. 現代アートとは?
 それに対し「現代アート」は、近代アートの側面を否定、または近代アートの余波から発展した新しい芸術運動です。
 先述したように「近代アート」では、美しさを兼ね備えた作品を、その見た目の「視覚的な形態」で良し悪しを判断していました。しかし、後に「現代アートの父」と称されるマルセル・デュシャンは、「近代アート」を目から得られる刺激だけを楽しむ「網膜的絵画」だと批判し、アートとは「視覚的な形態」によって作品の良し悪しを判断するものではなく、その作品に込められた「意味(≒コンセプト)」が重要で、それを鑑賞者が読み解いて楽しむ知的ゲームだ!と主張し、新しいアート・シーンの創造を提唱しました。
 これにより、一点物のハンド・メイドにこそ価値があり、「美こそ善」であるといったこれまでの美術界の既成概念は打ち破られ、アートの評価基準は完全に書き換えられました。それが「現代アート」の始まりです。

Ⅲ. 現代アートの楽しみ方
 デュシャンの主張は簡単に言うと次の3点です。
  ① アートは、「視覚的な外見(形)」を評価する「網膜的」なものではなく、そこに込められた「観念・概念(コンセプト)」が本質の知的活動である。
  ② アートは、「選択し」「名付けて」「新しい見方を示す」ことである。したがってアート作品はひと握りの天才が創り出すものでもなければ、高価な装飾でもなく、美術館でのみ楽しむ高尚なものでもない。
  ③ アートは、鑑賞者が作品を観て、作品に参加し、そのコンセプトを解読・解釈することで初めて作品として成立する。

 この3点を深読みして、多少の語弊はあるが完結にいうと、下記のようになります。
  ① アートの評価基準は、「外見」ではなく、作品に込められた「コンセプト」だ。
  ② アーティストは、モノを「選び」、それにコンセプトを込めて「命名し」、鑑賞者に「示す」だけで、誰にでもできる(芸術作品は一部の天才しか制作できないものではない)。
  ③ 鑑賞者は、自らの想像力を駆使して作品を自分なりに解釈する必要がある。

 つまり、①はアートの評価基準を示しています。②③は、アートはアーティストと鑑賞者の想像力を媒介としたやり取りで、これこそが「現代アート」の真骨頂だ!と主張している訳です。
 したがって、「現代アート」の作品の鑑賞は、このような視点を前提に、まずは作品を目の前にして、これはどんな表現なのか、この作品はどんなところに訴えかけようとしているのかと、作品のコンセプトを自身の想像力を働かせて能動的に考えることから始まります。

  因みに、デュシャンが制作し発表した最も有名な作品をご紹介します。(カバー画像参照)

マルセル・デュシャン 『泉』 1917年作
   既製品の男性用便器を横にして置いただけの作品で、
   偽名「R.MUTT」のサインを入れ、自身が審査員を
   務める無鑑査展覧会に出品した
 
 一点物のハンド・メイドにこそ価値があり、「美こそ善」であるといったこれまでの美術界の既成概念を打ち破るため、あえて「美」から一番遠くにあり、「一点物」とはかけ離れた既製品(レディ・メイド)である便器を使って、アートの既存の価値観に異議を唱えた。

 この作品が発表されて100年以上が経ちますが、2017年、世界のアーティスト、キュレーター、ギャラリスト、批評家などアートの専門家500人にとったアンケートにおいて、「最も強い影響力を持った20世紀のアート作品は?」という問いの結果、堂々の1位に輝いたのは、モネでもピカソでもなく、ウォーホルでもなく、このデュシャンの「泉」でした。アートの概念をひっくり返した、すごい影響力のあった作品なのです。